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愛猫やらお人形やら美柴双子やら…
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■この1003というサイト、始めた当初はハンターをメインに据え、しかしながらすでにビズを扱っていたわけですが。
大幅に改装した時に 持ってこなかったお話も少しあるのです。
二年以上前に載せていたお話ですが 二つ、再録という事で…!!笑"



■斉藤から見た、AAAという集団。

【AAA】

学校にいると、つるんでる友達と肩を組んだり 背中を押したりするのはいたって普通に良くある事だ。
でも、このAAAにおいては全くそうゆう触れ合いは通用しない。


多分…中条さんが俺を殴るぐらいだ…哀しいことに。
……あ。でもこの間は鴇さんにも投げ飛ばされた…恐かったなぁ あれは…。
って 俺なんかかなり可哀相じゃない?
………あぁ違う違う。そんな話じゃなくて。


とにかく、普通の友達みたいに仲良くなれない。
色んな手段や口実を行使してみるけれど、中条さんにも鴇さんにも 目覚しい進歩は一寸もない。
たまに頭にきて もう知るもんか!って思うこともある。

でも、それでも、ゲームが無事に終わって 家に帰る時 『もうちょっと一緒にいたいな』って…俺は思ってる。


隣に誰かがいる。
それだけでいい。
ただ その"誰か"を捜している。


AAAはきっと、『名前のない誰か』を捜しているチームなんだ。


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■かなり突発。未来捏造シリーズ。
大人鴇 と 無聴覚な子供。暗いお話。


ー…それは 病院からの帰り道での出来事だった。

駐車場まであと少し。
歩道橋を歩いている時、横に並んでいた優希が急に駆け出した。
ガシャンと音がたつほどの強い力で 突き当たる踊り場の柵に身を乗り出す。
何事かと慌てて 落ちてしまいそうな小さい身体を引き止めた。

優希は ひどく切迫した表情で、遠くを見ていた。
その視線を追うが、自分に見えるのは 街の風景だけだ。
あらゆる所に伸びる道路と走り抜ける車。
カフェやショッピングモールの洒落た屋根。
所々にあるオフィスビル。
至っていつも通りの街。

(…………。)
しかし 優希には そうは見えないらしい。
見開いた目は 一点を注視して、手はぎゅうと強く服の裾を握りしめている。
しばらくして、こちらを見上げた。
弱々しく腕を上げて 見ていた方向を指差す。
(………?)
そちらを見たが やはり何も異常は見当たらない。
何だ と軽く首を傾げ 優希に答えを促す。

(あそこで、人が、落ちたよ)

その手話に、心臓が 締め付けられるような衝撃を覚えた。
咄嗟に指差した場所を見て、優希を見返す。
今にも泣き出しそうな目には、反して強い意思が込められていた。

(助けに、行かなきゃ)


ーーーーーーー…………


優希から 落ちた人を見た というビルを聞き出し、その場所へ向かった。
そう遠くはない。近づくにつれ 優希がピタリと傍にくっついてきた。
じぃと その目は前方に見えてきた薄暗い路地の入り口を見ている。

(……此処か…?)
コクン と深く頷く反応に、妙な緊迫感が襲ってくる。

ビルとビルの間。
人が一人やっと通れるような隙間だ。
換気扇やエアコンのファンが剥き出しになっていて、地面にはゴミや瓦礫が散乱している。
突き当たりはまた違う建物が塞いでいる。どうやら抜け道はないようだ。
これでは、誰も入っていかないだろう。
前の通りは人の往来がある小綺麗な歩道にも関わらず、その路地だけは どんよりと暗い。

(…………………。)
こんな所、気味が悪いことには違いない。
路地の入り口、真正面で立ち止まり 優希と顔を見合わせた。
優希も やはり少し警戒し、躊躇っている様子だった。忙しなく 辺りを見回している。

(……どうする…?)
(………………行く。)
ゴクリ と息を飲み、優希が決断した。
狭い路地に まずは美柴が入り、その腰にしがみつくように優希が続く。
一歩、また一歩と慎重に進む。進むにつれ 空気が重苦しくなっていく。何か、何かがおかしい。
振り仰ぐと とても細い空が見えた。少し日が暮れて どんどんと視界は暗くなっていくように思う。

思い違いであればいい。
そう思いながら 視線を戻すと、思わず足が止まった。
続く優希もビクリと凍りついたのが感じられた。

放置された換気扇の向こうに…靴が見えた。
サラリーマンが履いているような黒い靴だ。
爪先が空に向いている。つまり靴の主は立っている状態ではない。倒れているのだ。

その換気扇の向こうに、誰かが、倒れている。

(……………………。)
(……………………。)

途端、優希がぜいぜいと激しく息を乱して、美柴の腰に顔を埋めた。
美柴は しがみつく優希を支えて、やっとの思いで出口まで後ずさる。

優希には、見せられない。
おそらく、あの倒れている身体は 生きてはいない…。

(男の人。ワイシャツに、青いネクタイしてる。これみたいな色)
優希の手話に 驚く。ここから見えるのは靴だけだ。全貌は確認できない。
しかし優希は これ、と自分の持っているバッグを指差す。群青色の肩掛けバッグだ。
何も言えずにいると 優希のサインは更に進んだ。

(さっき落ちたんじゃないんだよ。もう、ずっと前。ずっとね、……ここに…居るんだよ……)
みるみる泣き顔になっていく。恐怖なのか、悲観なのか、多分それ全部だ。

(指輪してるよ。多分ね、左手のここに指輪してる。それでね…)
さらに何か続けようとした優希の指先を 手の平で握り締めて遮った。
どうしてこの子供にそんな事が分かるのか、分からない。
でも その能力は確実に優希に辛く哀しい思いをさせている。
そこに覗いている靴先を睨んだ。

「………………。」
優希が見たものを、自分も確認する。第一、これが事実なら 通報する必要がある。
……もし優希の言うとおりなら、彼を探している家族が…きっと居る…。

優希には ここにいろ とサインを向けて、もう一度 その靴にゆっくりと近づく。
換気扇越しに 徐々に見えてきたのは、確かに 男性の遺体だった。

顔まで確認し 一度は思わず目を背けた。
瞼の裏で、いつか夢に見た半身の映像が横切った。
ぐっと拳を握り堪えて 深い息を胸の奥から吐き出す。

多少落ち着いて、再度その姿を見た。
白のワイシャツ。群青色のネクタイ。
放置され爪が剥がれてしまった指先。
その左手の薬指に、銀色のくすんだ指輪…。
ことごとく、優希の言った通りだった。

振り返ると、優希は立ち尽くしてぐすぐすと鼻をすすり泣いていた。
歩み寄り、しゃがんで そっと抱き寄せると、声をあげて肩に必死に抱きついてくる。
その体を抱えて、路地を抜け出した。
本当はすぐに通報するべきだろう。けれど、今は優希をずっと抱きしめていた。
その小さな頭の向こうでは 夕日が沈んでいく。

こんな哀しい夕日は、もう見たくない…。
力を込めて 優希の頭を抱き、止まない泣き声が居たたまれずに 強く目を閉じた。

どうかこれ以上、傷つけないで欲しい。

そう、願った。



長くなったので ここで切り替えます。
■大人鴇 と 無聴覚な子供。初詣。


イベント事だけでなく 日頃の買い物でさえも、人混みの中に優希を連れて行くのは あまり気が進まない。
はぐれてしまったら、という懸念もあるが 一番の理由は 出来るだけ静かな環境の中に居たいからだ。

迎えたばかりの新年。
初詣に向かうのは 自分にとって子供の頃からとても習慣づいたもので、優希と過ごすようになってからは なぜか尚更こうゆう行事は大切にしている。

けれど最寄駅のホームで どうしたものかと遠目から路線図を見上げてしまった。
どこに行っても見渡す限り 人、人、人。
何重にも折り重なる笑い声や足音。
手を握っている優希には、この喧騒は聞こえない。
ただただ忙しく動いているだけの人の足、唇、表情。
それがどんな心地なのかは 想像でしかないが、きっと…心地良いものではないだろう。
すべて聞こえている自分だって こうゆう騒がしい環境は好きじゃない。

出来るだけ近場で この昼時に人が少ない神社。

「…………………。」
思いついた場所は あまりにも自分には物騒な神社だった。
………あそこは参拝して きちんと拝殿に顔向けできる神社だろうか…

(どこ行くの?)
見上げてくる優希に、とりあえず行く先をサインで答えた。

(…花園神社。)



-----



新宿駅 東口から徒歩約10分。
駅からひたすら真っ直ぐ上がっていくと左手にあるのは、いつか自分が傘を差して立っていた鳥居。
大通りを行き交う人の流れから抜け出して、その鳥居を潜った。
前方に真っ直ぐ伸びるのは、いつか自分が走り抜けた通路。
両脇を見やれば "あの時"監視カメラを咥えていた狛犬が 今日も変わらず門番をしている。

何も変わっていない景色に、思わず 足が止まった。

人混みに押し黙っていた優希が初めて見る狛犬を指差して 意気揚々とカメラに収めている。
楽しそうに振り返り 何か手話を作ろうとして、はてと自分の顔を覗き込んだ。

(…どうしたの?)
気遣う優希の表情に 我に返った。
何でもないと首を振って、手を差し出す。
幼く暖かい手が きゅうと握り返してくる。
あの時 とても物騒な心持で走り抜けた道を、今こうして穏やかに進んでいる。奇妙な感覚だった。


通路を抜ければ、右手に大鳥居、左手に大階段とその上にある拝殿。
手水舎と 幾重にも並ぶ赤い鳥居。
どこを見ても 記憶は鮮明に浮かび上がってくる。
どこでどんなやり取りがあって、どこでどんな勝敗がついたのか……。

……ビズゲームは、あまり記憶に残らないだろうと思っていた…。
あの時、自分にとって重要なのは 過程ではなく結果だった。
確かに あの時があったからこそ 今の自分が居て、優希との日々が成り立つわけだが……だからといって感慨に浸ることもないし、思い起こすこともない。

そう思っていたのに、こんなにあの日々は自分の中で鮮明に残っていた。

「…?」
ぐいぐい と袖を引かれて、見れば優希が手水舎から杓を持ってきていた。なみなみと入っている水が危なっかしい。
こぼさないよう受け取って、優希を手水舎まで連れてゆく。

(これ、何する水?)
(口と手を洗う水。手 出して)
サインを交わすと 優希は素直に両手を差し出す。
ゆっくりその手に水を落とすと、一変して腕ごと引っ込めた。

(冷たい!)
慌てて批難してくる眼差しをかわし、自分も手を浄める。キンと凍みるような冷たさだった。

(…神様って綺麗好き?)
(………多分な)
そうなんだ と頷く優希の手にハンカチを渡した所で、鼻をついた匂いに顔を上げた。


「………。」
「………。」


見覚えのある長身と目元を隠す前髪。
咥え煙草に いかにも真っ当な仕事はしていなそうな雰囲気。


(……鴇?どうしたの?)

テン、テン、テン。
そんな効果音が付きそうなほど 唖然と 顔を見合わせる大人二人の間で、優希がコクリと首を傾げている。
男-中条伸人-は、優希を指差したまま こちらを見てこう言った。

「………何お前…生んだ?」

……まず、殴っておこうと思う。


■煌めくような出来事と出会うことになっています。(A New Day ポルノグラフィティ)

思いがけない出来事、の方が正しい展開。笑
美柴28歳、中条30歳、優希5~6歳。
………やばい 若干シリーズ化してきた優希編…笑"
いっそコンテンツ分けした方がいいですね すこしその辺も考えます。笑"


■未来捏造シリーズ。
大人鴇 と 無聴覚な子供。メリークリスマス!


僕は、サンタさんが居ないことを知っている。


【あったかい嘘つき】


クリスマスの歌を、僕は知らない。
歌詞は絵本で読んだことがある。
真っ赤なお鼻のトナカイさん。
いつも笑い者にされていて、だけどサンタさんがそのお鼻を褒めてくれる。
真っ赤なお鼻と真っ赤なサンタさん。

院内学級では 色んな子が歌を歌っていた。
だけど 僕には歌えない。それが少し寂しい。
きっと、とても楽しい歌なんだろうなって想像していた。


鴇の車から見える クリスマスの綺麗な街を見るのはすごく好き。

病院から帰ってくると 鴇はまだ仕事が残っているんだと 出かけていった。
一人でも大丈夫だよと送り出して、一人になった僕はリビングのカーテンを開けた。

(鴇の車が見えるかもしれない)
そう思って、ベランダに出て 少し背伸びをして外を覗いた。
お向かいの少し大きな家が きらきらになっていて、僕は口をぽかんと開けて驚いた。

(昨日まで、なんともなかったのに!)
写真にして、鴇にプリントして見せてあげよう。
急いで部屋に戻って 買ってもらったデジカメを装着。
『夜景』という字にセットして、落とさないようにストラップをしっかり握る。
いざ!と精一杯の背伸びをして 腕を伸ばして シャッターを押す。

(……………。)
爪先立ちの足がぷるぷるして、上手く撮れない。
何度も挑戦したけれど、鴇が喜んでくれそうな写真は撮れなかった。

(……ちょっとだけなら、良いよね…)

鴇が居ない時、勝手に玄関を開けない・外に出ないと約束している。
けれど僕はどうしても、写真が撮りたかったんだ。


…………


本当は、今日はいつもより早く帰宅するつもりだった。
休憩の間に優希を迎えに行って 残った少しの仕事を片付けたら、普通の家族の様にケーキを買いに行く。
……そんなありきたりな、普通のクリスマスを 優希にしたかった。

「……………。」

玄関はおろか 廊下すら真っ暗だった。
当たり前だ もう26日になってしまっている。
もう4時間前には優希の寝る時間。

「………………。」
コートを脱いで リビングへと入る。
今日ぐらいは 普通の家族のようにしたかった…。
そんな重く苦しい気持ちで カチリと電気をつけて、

「………………。」
言葉を失った。

リビングの真ん中を 少したるんで横切る 一本の糸。
そこに何枚も何枚も連なった 写真。
写真の合間の夜空を駆けるサンタクロースとトナカイの絵。
「メリークリスマス!」と 少し歪な字体で書かれたスケッチブック。
下のテーブルには デジカメとプリンターと、画用紙の上で眠っている子供。

静かに傍へ歩み、吊るされた写真を手にする。
それは向かいの家のイルミネーションだった。

赤。白。青。緑。金。銀。

どの色も、見たことないぐらい 綺麗に思えた。

見下ろせば、優希はコートを着たまま眠っている。
きっと急いで下に降りて 急いでプリントして…こんな絵本の世界みたいな飾りをしてくれた。

「………………。」
胸の奥から込上げるような溜息は、説明しがたい暖かい感情だった。
絶対に起こさないように ゆっくりとこの両腕で包んで、ベッドに運んだ。


……………


朝になって、もぞもぞと毛布から顔を出すと 僕はきちんとベッドで眠っていた。
鴇が帰ってきたんだ。
そう気がついて でももしかしたら約束を破ったから叱られるかもしれない なんて不安を覚えて……。
どうしようと視線を泳がせていると、ソレは目に飛び込んできた。

ベッドの頭に ぶらさがった赤いモコモコした靴下。

(…!?)
何かを予想して 飛び起きた。
中に入っていたのは 小さな白い箱。
結んであるリボンを解いて、そぅ…と開ける。

(……カメラ…!!)

それは、少し前に僕が鴇に初めて強請った、古い型のカメラ。
操作が難しいことも分かっていたし、とても高いことも分かっていたから、諦めていたんだ。

(…………)

でも、ここにある。
これは紛れもない、クリスマスプレゼントだ。

僕はそのカメラをぎゅうと抱えて、リビングに出た。
キッチンでは鴇がミルクを温めていた。

「……とき。」

声にして呼んだのは、多分初めてだった。
振り返った鴇はいつもよりずっと優しい表情で 僕が持っているカメラを見た。

(…どうしたんだ、そのカメラ)

なんて、凄くわざとらしい手話。
でも僕は嬉しくて嬉しくて、たたッと駆けて 鴇の腰に抱きついた。
受け止めた鴇の手が、くしゃりと髪を撫でる。
僕は鴇を見上げて、サインを返した。


(サンタさんがくれたんだよ!)

メリークリスマス。
それは僕と鴇が、お互いに嘘をついた日。

だけど、

(……良い子にしてたからだな)

とても幸せな日。


■ Happy merry Christmass!!
本当はフリーにしたかったクリスマス話。ですが、あまりにも未来捏造話なので、遠慮します笑"
養子くん話、個人的に この何とも言えない感じがたまりません。笑
■未来捏造シリーズ。大人鴇&無聴覚な子供 出会い。


僕が初めて 鴇を見たのは、病院の中庭。


………


ベンチに座っていたその人を見た時、とても驚いた。
いつも中庭のブランコで会う人と凄く似ていて しかもそれが『生きている人』だったから。

「―…しぎ!」

僕は音が聞こえない。
だからその時 僕がきちんとそう言えたのかは分からない。でも突然の事に驚いて そう声に出して呼んでいた。
散歩の時間に付き添ってくれている看護師さんの手をするりと抜け出して 僕はベンチに駆けた。

(どうして此処にいるの?今日はブランコじゃないの?)

頭の中でそう問いかけた。生きていない人達とは 手話がなくてもこうやって会話が出来ることを、僕はいつの頃から知っている。
だけど その時、その会話は上手くいかなかった。

「…………………。」
僕の声に顔を上げたその人は、ぽかんと僕を見ている。

(……しぎ?)

もう一度頭の中で名前を呼んだ。ちゃんと伝わるように じっと見つめる。
だけどその人は凄く不思議そうに少し首を傾げるだけ。何だか分からなくて、まるでその人の真似をするように 僕も首を傾げた。

僕の後を慌てて追いかけてきた看護師さんが その人に謝って、だけどその人は看護師さんにはあまり反応しないで ベンチから立ち上がると 僕の前にしゃがんだ。

「……今、なんて…?」
唇の動きで きっとそう言ったんだと分かった。
だから僕は最初と同じようにシギの名を声に出した。それから きっと頭の中の会話は繋がらないんだと思って、一生懸命 今と同じ事を声に出して言おうとした。
後ろから看護師さんに肩を抱えられた。
僕がこうやって声を出すと、皆 僕をあやす様にこうする。…僕は意味があって言っているつもりなんだけれど、いつもそれはなかなか伝わらない。
言いたい事があるのに、と振り返ったら 看護師さんはその人に 僕の耳の話を説明してる途中のようだった。

でも構わずに 僕はその人に話しかける。
しぎ じゃないなら、一体誰なのか。僕はしぎに話さなきゃいけない事がたくさんあるんだ。

「…鴫を、知ってるのか…?」
僕の耳を理解して とてもゆっくりとそう問いかけてくる。
頷いて答えると、とても真剣な面持ちで 今度は看護師さんに何か言っている。
どんな話をしているのか 全く分からなかったけれど、看護師さんは僕から離れて ベンチに座るように勧められた。

残ったのは、僕とその人とスケッチブック。
いつも、手話が出来ない人とはこれで会話をするように言われている。
でも僕はあまり看護師さん以外の人と話をしないから スケッチブックは真っ白だ。
僕はそこに 初めて、たくさんの字を書いた。

僕の名前。しぎの事。

その人は 次のページに 少しだけ字を書いた。

とき という名前。

難しい漢字は 指をさすと平仮名に変えてくれた。
あとはほとんどが質問ばかり。

『生きていない人達』
頭の中で会話できること。
そこらじゅうに見える奇妙な人の影。
そうゆう事を言うのは 普通じゃないんだってことは知っている。

だけどその人は…

(羨ましい)

そう書いた。
その時の表情は 今でも覚えている。
この人は きっとまだ哀しみの中にいるんだって思った。

だから僕は、しぎ の事は今もあまり良く知らない。
鴇にとって大切で 苦しい何かだ。思い出したい記憶なのか忘れ去りたい記憶なのか 分からないけれど、鴇の中で絶対に消えない何かだ。

…………だけど僕は、しぎに感謝している。
ふと気がつくと隣のブランコで どこか遠い目で空を見ていた姿。
頭の中に響いてきた会話。少しだけ意地悪を言う笑顔や 優しい表情。

そうゆうの全部が繋がって、ときに出逢った。

僕の新しい家族。


…………


(…オムライス食べたい人)
(はい!)

しょぼん としていた僕が 勢いよく手を上げて見上げると、鴇は少し呆れたように笑った。
僕も笑って、鴇の手を握った。

そっと もう一度後ろを振り返った。

シギは、ブランコの前で ふわりと目を閉じて笑っていた。

(しぎ…明日も会えるよね?)
(……うん 会えるよ…)

その頬に 白い涙が流れていて、だから僕はそれが嘘だと分かった。
きらきらと涙が光って、その姿は消えていった。

あの日から、僕は一度もシギを見ていない。



■例えば 出逢ったのは最初から、誰より君を深く思うためだった(loved 清春)

出逢ったばかりの頃は まだシギの事が受け入れきれないトキが、まだトキの傍を離れられないシギが、優希を通じて少しづつ変わっていけたら良い。そんな捏造シリーズ。
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