愛猫やらお人形やら美柴双子やら…
■未来捏造シリーズ。大人鴇&無聴覚な子供 出会い。
僕が初めて 鴇を見たのは、病院の中庭。
………
ベンチに座っていたその人を見た時、とても驚いた。
いつも中庭のブランコで会う人と凄く似ていて しかもそれが『生きている人』だったから。
「―…しぎ!」
僕は音が聞こえない。
だからその時 僕がきちんとそう言えたのかは分からない。でも突然の事に驚いて そう声に出して呼んでいた。
散歩の時間に付き添ってくれている看護師さんの手をするりと抜け出して 僕はベンチに駆けた。
(どうして此処にいるの?今日はブランコじゃないの?)
頭の中でそう問いかけた。生きていない人達とは 手話がなくてもこうやって会話が出来ることを、僕はいつの頃から知っている。
だけど その時、その会話は上手くいかなかった。
「…………………。」
僕の声に顔を上げたその人は、ぽかんと僕を見ている。
(……しぎ?)
もう一度頭の中で名前を呼んだ。ちゃんと伝わるように じっと見つめる。
だけどその人は凄く不思議そうに少し首を傾げるだけ。何だか分からなくて、まるでその人の真似をするように 僕も首を傾げた。
僕の後を慌てて追いかけてきた看護師さんが その人に謝って、だけどその人は看護師さんにはあまり反応しないで ベンチから立ち上がると 僕の前にしゃがんだ。
「……今、なんて…?」
唇の動きで きっとそう言ったんだと分かった。
だから僕は最初と同じようにシギの名を声に出した。それから きっと頭の中の会話は繋がらないんだと思って、一生懸命 今と同じ事を声に出して言おうとした。
後ろから看護師さんに肩を抱えられた。
僕がこうやって声を出すと、皆 僕をあやす様にこうする。…僕は意味があって言っているつもりなんだけれど、いつもそれはなかなか伝わらない。
言いたい事があるのに、と振り返ったら 看護師さんはその人に 僕の耳の話を説明してる途中のようだった。
でも構わずに 僕はその人に話しかける。
しぎ じゃないなら、一体誰なのか。僕はしぎに話さなきゃいけない事がたくさんあるんだ。
「…鴫を、知ってるのか…?」
僕の耳を理解して とてもゆっくりとそう問いかけてくる。
頷いて答えると、とても真剣な面持ちで 今度は看護師さんに何か言っている。
どんな話をしているのか 全く分からなかったけれど、看護師さんは僕から離れて ベンチに座るように勧められた。
残ったのは、僕とその人とスケッチブック。
いつも、手話が出来ない人とはこれで会話をするように言われている。
でも僕はあまり看護師さん以外の人と話をしないから スケッチブックは真っ白だ。
僕はそこに 初めて、たくさんの字を書いた。
僕の名前。しぎの事。
その人は 次のページに 少しだけ字を書いた。
とき という名前。
難しい漢字は 指をさすと平仮名に変えてくれた。
あとはほとんどが質問ばかり。
『生きていない人達』
頭の中で会話できること。
そこらじゅうに見える奇妙な人の影。
そうゆう事を言うのは 普通じゃないんだってことは知っている。
だけどその人は…
(羨ましい)
そう書いた。
その時の表情は 今でも覚えている。
この人は きっとまだ哀しみの中にいるんだって思った。
だから僕は、しぎ の事は今もあまり良く知らない。
鴇にとって大切で 苦しい何かだ。思い出したい記憶なのか忘れ去りたい記憶なのか 分からないけれど、鴇の中で絶対に消えない何かだ。
…………だけど僕は、しぎに感謝している。
ふと気がつくと隣のブランコで どこか遠い目で空を見ていた姿。
頭の中に響いてきた会話。少しだけ意地悪を言う笑顔や 優しい表情。
そうゆうの全部が繋がって、ときに出逢った。
僕の新しい家族。
…………
(…オムライス食べたい人)
(はい!)
しょぼん としていた僕が 勢いよく手を上げて見上げると、鴇は少し呆れたように笑った。
僕も笑って、鴇の手を握った。
そっと もう一度後ろを振り返った。
シギは、ブランコの前で ふわりと目を閉じて笑っていた。
(しぎ…明日も会えるよね?)
(……うん 会えるよ…)
その頬に 白い涙が流れていて、だから僕はそれが嘘だと分かった。
きらきらと涙が光って、その姿は消えていった。
あの日から、僕は一度もシギを見ていない。
■例えば 出逢ったのは最初から、誰より君を深く思うためだった(loved 清春)
出逢ったばかりの頃は まだシギの事が受け入れきれないトキが、まだトキの傍を離れられないシギが、優希を通じて少しづつ変わっていけたら良い。そんな捏造シリーズ。
僕が初めて 鴇を見たのは、病院の中庭。
………
ベンチに座っていたその人を見た時、とても驚いた。
いつも中庭のブランコで会う人と凄く似ていて しかもそれが『生きている人』だったから。
「―…しぎ!」
僕は音が聞こえない。
だからその時 僕がきちんとそう言えたのかは分からない。でも突然の事に驚いて そう声に出して呼んでいた。
散歩の時間に付き添ってくれている看護師さんの手をするりと抜け出して 僕はベンチに駆けた。
(どうして此処にいるの?今日はブランコじゃないの?)
頭の中でそう問いかけた。生きていない人達とは 手話がなくてもこうやって会話が出来ることを、僕はいつの頃から知っている。
だけど その時、その会話は上手くいかなかった。
「…………………。」
僕の声に顔を上げたその人は、ぽかんと僕を見ている。
(……しぎ?)
もう一度頭の中で名前を呼んだ。ちゃんと伝わるように じっと見つめる。
だけどその人は凄く不思議そうに少し首を傾げるだけ。何だか分からなくて、まるでその人の真似をするように 僕も首を傾げた。
僕の後を慌てて追いかけてきた看護師さんが その人に謝って、だけどその人は看護師さんにはあまり反応しないで ベンチから立ち上がると 僕の前にしゃがんだ。
「……今、なんて…?」
唇の動きで きっとそう言ったんだと分かった。
だから僕は最初と同じようにシギの名を声に出した。それから きっと頭の中の会話は繋がらないんだと思って、一生懸命 今と同じ事を声に出して言おうとした。
後ろから看護師さんに肩を抱えられた。
僕がこうやって声を出すと、皆 僕をあやす様にこうする。…僕は意味があって言っているつもりなんだけれど、いつもそれはなかなか伝わらない。
言いたい事があるのに、と振り返ったら 看護師さんはその人に 僕の耳の話を説明してる途中のようだった。
でも構わずに 僕はその人に話しかける。
しぎ じゃないなら、一体誰なのか。僕はしぎに話さなきゃいけない事がたくさんあるんだ。
「…鴫を、知ってるのか…?」
僕の耳を理解して とてもゆっくりとそう問いかけてくる。
頷いて答えると、とても真剣な面持ちで 今度は看護師さんに何か言っている。
どんな話をしているのか 全く分からなかったけれど、看護師さんは僕から離れて ベンチに座るように勧められた。
残ったのは、僕とその人とスケッチブック。
いつも、手話が出来ない人とはこれで会話をするように言われている。
でも僕はあまり看護師さん以外の人と話をしないから スケッチブックは真っ白だ。
僕はそこに 初めて、たくさんの字を書いた。
僕の名前。しぎの事。
その人は 次のページに 少しだけ字を書いた。
とき という名前。
難しい漢字は 指をさすと平仮名に変えてくれた。
あとはほとんどが質問ばかり。
『生きていない人達』
頭の中で会話できること。
そこらじゅうに見える奇妙な人の影。
そうゆう事を言うのは 普通じゃないんだってことは知っている。
だけどその人は…
(羨ましい)
そう書いた。
その時の表情は 今でも覚えている。
この人は きっとまだ哀しみの中にいるんだって思った。
だから僕は、しぎ の事は今もあまり良く知らない。
鴇にとって大切で 苦しい何かだ。思い出したい記憶なのか忘れ去りたい記憶なのか 分からないけれど、鴇の中で絶対に消えない何かだ。
…………だけど僕は、しぎに感謝している。
ふと気がつくと隣のブランコで どこか遠い目で空を見ていた姿。
頭の中に響いてきた会話。少しだけ意地悪を言う笑顔や 優しい表情。
そうゆうの全部が繋がって、ときに出逢った。
僕の新しい家族。
…………
(…オムライス食べたい人)
(はい!)
しょぼん としていた僕が 勢いよく手を上げて見上げると、鴇は少し呆れたように笑った。
僕も笑って、鴇の手を握った。
そっと もう一度後ろを振り返った。
シギは、ブランコの前で ふわりと目を閉じて笑っていた。
(しぎ…明日も会えるよね?)
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きらきらと涙が光って、その姿は消えていった。
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