愛猫やらお人形やら美柴双子やら…
■がっつり砂糖大盛りな中鴇。
それは、ふと思い立った行動だった。
「お前、指輪はしないんだな」
ある日。
煎れてやったコーヒーを口に運ぶ美柴の隣に 中条は腰を下ろした。
頻繁に会うわけではないが、思い返せば 美柴が手にアクセサリーを付けているのはあまり見かけない。
ゲームの時はもしかしたら意識しているかもしれない。
得物を使う事が多い中条と異なり、初っ端から素手で相手にかかっていく美柴。
あの俊敏な拳に もし指輪なんて付いていたら…それはおそらくもう ナイフなんかよりも立派な、鋭利な凶器だろう…。
「付けてるとこ、見た事がねぇーからな」
別に理由を聞きたいわけじゃなかった。
ただの会話の一端だ。
「………………。」
案の定、返事らしい返事は無かった。
だから?というような目でこちらを見返す。
「なんだ、苦手なのか?」
「………別にそうじゃない」
「他のは付けるじゃねーか。これとかよ」
そう言い、首筋に手を這わせ 妖しく撫でる。
ネックレスのチェーンを指に絡ませようとすると、べしっと振り払われた。
軽く笑うと むっと据わった表情が返ってきた。
くすぐったさが残っているらしく 首筋に手を当て気にしている美柴の横で、中条は自分が付けていた指輪を一つ外した。
「…?」
気がついた美柴が訝しげに 中条を見上げる。
その視線に ふと笑んで美柴の手を取る。
「……何?」
「逃げんなよ」
戸惑って振り払おうとする手を ぎゅっと掴む。
にやんと笑み、深く視線を合わせてから その薬指に指輪を通した。
別に深い意味は無い。
ちょうど入りそうなのが薬指だっただけの話。
「ちょっと緩いか?まぁいいか」
「…………………。」
「無くすなよ」
そう言って美柴の顔を見ると、困ったような なんとも言えない表情をしていた。
「……貰えない…」
「あー?聞こえねぇー」
遠慮した声色。
もちろん聞こえてはいたが、気がない返事で煙草を吹かした。
数年前から愛用していた指輪。
しかし美柴なら別に構わないかと思ったのだ。
「指、軽くなったわ」
「……………。」
はぐらかされた美柴は じっと嵌められた指輪を見る。
サイズの合わないそれを 何度か外したり嵌めたりを繰り返し、結果 外れないように指にしっかり差し入れて 握りしめた。
無表情なりに懸命なそんな仕草に、中条はぐいと身体を寄せる。
「もっと嬉しそうな顔しろよ」
「………別に嬉しくない」
「へぇ?」
「………………」
それ以上反論しない唇にキスをする。
美柴は深く絡むそれにも顔を背けない。
ふと吐息を零して 呼吸を求める危うい表情に煽られ、中条は満足げに笑った。
ーーー…………。
翌朝、毛布に入り込んできた冷たい空気に起こされて 中条は目を覚ました。
「……何してんだ」
ぐるりと寝返ると、ベッドから出ていた美柴が 何か探るように視線を彷迷わせていた。
声を掛けると ビクリと肩を張って、顔を上げる。
「……あ?どうした」
「……………早く、目が覚めたから」
微かに強張っている目元。
昨晩の衣服は着直しておらず、半裸。
目が覚めたならまず何か着るはずだろう。
「……だったらお前、服ぐらい着ろよ。朝っぱらから誘ってんのか?」
怪しいとは思ったが 寝起きで怠く、適当に流した。
「……………。」
それから、学校の時間が迫る美柴は身なりを揃えると 中条宅をあとにした。
終始、視線を床に彷迷わせたまま……。
ーーーーー……………
数日後。
「…ッ……ハ、アッ」
狭い壁を熱い熱に押し広げられる感覚。
苦しいような、待ち遠しいような、混乱する感覚だ。
身体を被せる中条の肩に、美柴は手を掛けて ギリリと指でその皮膚を引っ掻く。
「ッ、!」
しかし視界に入った自分の手を見て、ザッと中条の肩から手を引いた。
甘く衝かれた感覚に喘ぐ指先は行き場所を迷い、ぎゅっとシーツに縋る。
些細な行動を気にする事なく、中条は強く腰を打った。
懸命に吐息を逃がす唇を塞いで 組み敷いていた身体を抱え上げる。
「!?んッ」
自分が上になる体位になると悟り、美柴は抗うように中条の胸に腕を突っぱねる。
嫌だと小さく首を振って 起きまいとした。
けれど中条は まるで分かっていたかのように、キスを送って宥める。
突き上げる律動は一旦止まる。
ただただ唇を交わして、紅い髪を掬い撫でる。
「…ッ、ハァ…」
しばらくすると 強い刺激を焦らすキスに溺れて、身体は 素直に中条の首に腕を回す。
「…ッ起こすぞ」
甘えてきた身体を 胡座の上に抱き起こすと、美柴が はっと息を飲む。
腕の中で ぐっと強張る肩。
その緊張に 内壁がより一層狭まる。攻め入った中条の軸にも熱い快感が伝わる。
全身全霊で感じているその反応が可愛く、首筋に舌を這わせた。
「ッ…お前も動けよ」
「…アッ、無理、ッ」
下から攻め立てると、頼りなく揺れる。
眉を寄せて喘ぐ表情を楽しんで、余裕のない熱を握った。
触るな、と腰を浮かせるが許さない。強く突き上げる。
何度か繰り返す内に、耐え切れなくなった美柴が ぎゅうとしがみついてきた。
「…………。」
中条はその抱きつく力に応えて ぽふと頭を抱く。
片手に ベッドサイドからネックレスのチェーンを引き寄せていた。
「んッ……ハッ、ア…?」
急に収まった中条の動きに 美柴は顔を上げた。
抱きしめられ、少し戸惑ってしまう。
「……何、して…?」
中条は、後頭部辺りで何かしている様だ。
首を回し 後ろを見ようとした。しかし中条に肩を持たれて 向き合う形になる。
「これでいいか」
「?……ッ!これ…」
中条の指先が弾いたのは、ネックレスだった。
美柴の鎖骨に流れるチェーンに掛かっているのは、一つの指輪。
つい数日前のあの夜に、中条が美柴にあげた指輪だ。
「枕の下に入り込んでた。やっぱお前には緩かったか」
「……………」
笑んでいる中条とは反対に、美柴は俯いてリングに触れている。
無くしていたのが知られていて、罰が悪いらしい。
応えない美柴に焦れて、グン!と腰を突き上げる。
突然の動きに吐息を漏らして揺れた美柴は 唇を噛んで、思わず顔を上げる。
「んッ…」
「お前、さっきからずっと俺に手ぇ見られないようにしてたな」
「………………。」
薄く笑い、狼狽えている目を覗き込む。
頑なに目を反らしていた美柴は、中条の意地悪な視線に観念して 息をついた。
「……知ってたなら、先に言えばいいだろ…」
「それじゃつまんねーじゃねぇーか。後ろめたい気持ち抱えたまんまのお前が良い。そそられる」
「……………………。」
いつもの「変態」と言う台詞は飲み込んで ふいと顔を背ける。
「それに、こうゆう時の方が素直な反応するだろ」
「………性格悪い」
「そんな奴に貰った指輪、必死で探してたのはどこのどいつだ?」
「……………………。」
本当に悔しそうな表情。
それは中条にとっては物珍しい美柴の様子。
ははっ と笑い、一文字に結ばれた唇にキスを降らせる。
「俺がここまでしてやったんだ…無くすんじゃねーぞ」
両手で頬を包んで、視線を交わす。
意地を張っていた美柴も 中条の真摯な声に目を合わす。
「……無くさない」
頷いたと分かった次の瞬間には 深くくちづけ。
食らいつくようなキスだった。
「ッ、!」
「気ぃ抜くなよ」
そのまま押し倒し 華奢な脚を押し上げて突く。
逃げる隙など与えず、良い場所だけを攻め立てる。
「ッ、んッ…!!」
限界まで追い詰めるラストスパート。
は、は、と絶え絶えの呼吸が行き交う。
堪えきれずに上がる感極まった声を聞き、中条は余裕無くもふと笑う。
迫る絶頂の予感に奮え、しがみつく手の平を握り返した。
強く強く抱き合って 強張る快感を迎える。
「~…ん、ァッッ!!」
「…ッ」
白く飛び散る体液を感じる二人の間で、チャラリと音が鳴った。
リングは 美柴の上がった呼吸に合わせて、肌の上で上下していた。
まだ疼く甘い余韻に朦朧としながら、美柴がそれを握る。
「………無くさない…」
ぽつりと呟いた言葉。
それはまるで自分自身に確かめるようなものだった。
■残り少ない純情のカケラの、最後ひとつは… (ジレンマ/ポルノグラフィティ)
指輪をネックレスにするの、なんか好きだな。
なんとか手を見られないようにする美柴さんは、多分めっちゃ可愛い。
さりげなさを装いつつ、絶対に中条さんにバレてるパターンです。笑
それは、ふと思い立った行動だった。
「お前、指輪はしないんだな」
ある日。
煎れてやったコーヒーを口に運ぶ美柴の隣に 中条は腰を下ろした。
頻繁に会うわけではないが、思い返せば 美柴が手にアクセサリーを付けているのはあまり見かけない。
ゲームの時はもしかしたら意識しているかもしれない。
得物を使う事が多い中条と異なり、初っ端から素手で相手にかかっていく美柴。
あの俊敏な拳に もし指輪なんて付いていたら…それはおそらくもう ナイフなんかよりも立派な、鋭利な凶器だろう…。
「付けてるとこ、見た事がねぇーからな」
別に理由を聞きたいわけじゃなかった。
ただの会話の一端だ。
「………………。」
案の定、返事らしい返事は無かった。
だから?というような目でこちらを見返す。
「なんだ、苦手なのか?」
「………別にそうじゃない」
「他のは付けるじゃねーか。これとかよ」
そう言い、首筋に手を這わせ 妖しく撫でる。
ネックレスのチェーンを指に絡ませようとすると、べしっと振り払われた。
軽く笑うと むっと据わった表情が返ってきた。
くすぐったさが残っているらしく 首筋に手を当て気にしている美柴の横で、中条は自分が付けていた指輪を一つ外した。
「…?」
気がついた美柴が訝しげに 中条を見上げる。
その視線に ふと笑んで美柴の手を取る。
「……何?」
「逃げんなよ」
戸惑って振り払おうとする手を ぎゅっと掴む。
にやんと笑み、深く視線を合わせてから その薬指に指輪を通した。
別に深い意味は無い。
ちょうど入りそうなのが薬指だっただけの話。
「ちょっと緩いか?まぁいいか」
「…………………。」
「無くすなよ」
そう言って美柴の顔を見ると、困ったような なんとも言えない表情をしていた。
「……貰えない…」
「あー?聞こえねぇー」
遠慮した声色。
もちろん聞こえてはいたが、気がない返事で煙草を吹かした。
数年前から愛用していた指輪。
しかし美柴なら別に構わないかと思ったのだ。
「指、軽くなったわ」
「……………。」
はぐらかされた美柴は じっと嵌められた指輪を見る。
サイズの合わないそれを 何度か外したり嵌めたりを繰り返し、結果 外れないように指にしっかり差し入れて 握りしめた。
無表情なりに懸命なそんな仕草に、中条はぐいと身体を寄せる。
「もっと嬉しそうな顔しろよ」
「………別に嬉しくない」
「へぇ?」
「………………」
それ以上反論しない唇にキスをする。
美柴は深く絡むそれにも顔を背けない。
ふと吐息を零して 呼吸を求める危うい表情に煽られ、中条は満足げに笑った。
ーーー…………。
翌朝、毛布に入り込んできた冷たい空気に起こされて 中条は目を覚ました。
「……何してんだ」
ぐるりと寝返ると、ベッドから出ていた美柴が 何か探るように視線を彷迷わせていた。
声を掛けると ビクリと肩を張って、顔を上げる。
「……あ?どうした」
「……………早く、目が覚めたから」
微かに強張っている目元。
昨晩の衣服は着直しておらず、半裸。
目が覚めたならまず何か着るはずだろう。
「……だったらお前、服ぐらい着ろよ。朝っぱらから誘ってんのか?」
怪しいとは思ったが 寝起きで怠く、適当に流した。
「……………。」
それから、学校の時間が迫る美柴は身なりを揃えると 中条宅をあとにした。
終始、視線を床に彷迷わせたまま……。
ーーーーー……………
数日後。
「…ッ……ハ、アッ」
狭い壁を熱い熱に押し広げられる感覚。
苦しいような、待ち遠しいような、混乱する感覚だ。
身体を被せる中条の肩に、美柴は手を掛けて ギリリと指でその皮膚を引っ掻く。
「ッ、!」
しかし視界に入った自分の手を見て、ザッと中条の肩から手を引いた。
甘く衝かれた感覚に喘ぐ指先は行き場所を迷い、ぎゅっとシーツに縋る。
些細な行動を気にする事なく、中条は強く腰を打った。
懸命に吐息を逃がす唇を塞いで 組み敷いていた身体を抱え上げる。
「!?んッ」
自分が上になる体位になると悟り、美柴は抗うように中条の胸に腕を突っぱねる。
嫌だと小さく首を振って 起きまいとした。
けれど中条は まるで分かっていたかのように、キスを送って宥める。
突き上げる律動は一旦止まる。
ただただ唇を交わして、紅い髪を掬い撫でる。
「…ッ、ハァ…」
しばらくすると 強い刺激を焦らすキスに溺れて、身体は 素直に中条の首に腕を回す。
「…ッ起こすぞ」
甘えてきた身体を 胡座の上に抱き起こすと、美柴が はっと息を飲む。
腕の中で ぐっと強張る肩。
その緊張に 内壁がより一層狭まる。攻め入った中条の軸にも熱い快感が伝わる。
全身全霊で感じているその反応が可愛く、首筋に舌を這わせた。
「ッ…お前も動けよ」
「…アッ、無理、ッ」
下から攻め立てると、頼りなく揺れる。
眉を寄せて喘ぐ表情を楽しんで、余裕のない熱を握った。
触るな、と腰を浮かせるが許さない。強く突き上げる。
何度か繰り返す内に、耐え切れなくなった美柴が ぎゅうとしがみついてきた。
「…………。」
中条はその抱きつく力に応えて ぽふと頭を抱く。
片手に ベッドサイドからネックレスのチェーンを引き寄せていた。
「んッ……ハッ、ア…?」
急に収まった中条の動きに 美柴は顔を上げた。
抱きしめられ、少し戸惑ってしまう。
「……何、して…?」
中条は、後頭部辺りで何かしている様だ。
首を回し 後ろを見ようとした。しかし中条に肩を持たれて 向き合う形になる。
「これでいいか」
「?……ッ!これ…」
中条の指先が弾いたのは、ネックレスだった。
美柴の鎖骨に流れるチェーンに掛かっているのは、一つの指輪。
つい数日前のあの夜に、中条が美柴にあげた指輪だ。
「枕の下に入り込んでた。やっぱお前には緩かったか」
「……………」
笑んでいる中条とは反対に、美柴は俯いてリングに触れている。
無くしていたのが知られていて、罰が悪いらしい。
応えない美柴に焦れて、グン!と腰を突き上げる。
突然の動きに吐息を漏らして揺れた美柴は 唇を噛んで、思わず顔を上げる。
「んッ…」
「お前、さっきからずっと俺に手ぇ見られないようにしてたな」
「………………。」
薄く笑い、狼狽えている目を覗き込む。
頑なに目を反らしていた美柴は、中条の意地悪な視線に観念して 息をついた。
「……知ってたなら、先に言えばいいだろ…」
「それじゃつまんねーじゃねぇーか。後ろめたい気持ち抱えたまんまのお前が良い。そそられる」
「……………………。」
いつもの「変態」と言う台詞は飲み込んで ふいと顔を背ける。
「それに、こうゆう時の方が素直な反応するだろ」
「………性格悪い」
「そんな奴に貰った指輪、必死で探してたのはどこのどいつだ?」
「……………………。」
本当に悔しそうな表情。
それは中条にとっては物珍しい美柴の様子。
ははっ と笑い、一文字に結ばれた唇にキスを降らせる。
「俺がここまでしてやったんだ…無くすんじゃねーぞ」
両手で頬を包んで、視線を交わす。
意地を張っていた美柴も 中条の真摯な声に目を合わす。
「……無くさない」
頷いたと分かった次の瞬間には 深くくちづけ。
食らいつくようなキスだった。
「ッ、!」
「気ぃ抜くなよ」
そのまま押し倒し 華奢な脚を押し上げて突く。
逃げる隙など与えず、良い場所だけを攻め立てる。
「ッ、んッ…!!」
限界まで追い詰めるラストスパート。
は、は、と絶え絶えの呼吸が行き交う。
堪えきれずに上がる感極まった声を聞き、中条は余裕無くもふと笑う。
迫る絶頂の予感に奮え、しがみつく手の平を握り返した。
強く強く抱き合って 強張る快感を迎える。
「~…ん、ァッッ!!」
「…ッ」
白く飛び散る体液を感じる二人の間で、チャラリと音が鳴った。
リングは 美柴の上がった呼吸に合わせて、肌の上で上下していた。
まだ疼く甘い余韻に朦朧としながら、美柴がそれを握る。
「………無くさない…」
ぽつりと呟いた言葉。
それはまるで自分自身に確かめるようなものだった。
■残り少ない純情のカケラの、最後ひとつは… (ジレンマ/ポルノグラフィティ)
指輪をネックレスにするの、なんか好きだな。
なんとか手を見られないようにする美柴さんは、多分めっちゃ可愛い。
さりげなさを装いつつ、絶対に中条さんにバレてるパターンです。笑
PR
■AAA。とあるゲームにて。
ほとんど廃墟と化した古ビル。
AAAは三人で、潜む敵を探していた。
おそらく若者に肝試しなどで使われることがあるのだろう。
ビルの中は 瓦礫やオフィス家具が転がって殺伐としている。
「どうだ?」
「……何も。」
中条と美柴は それぞれ脇にあった部屋から出てきて 廊下で顔を合わせる。
「んだよ 誰も出てこねぇーじゃねーか。やる気あんのか敵さんはよ」
「…でもあと1時間もある」
物が散乱した廊下は仄暗く狭い。必然的に 二人の距離は近い。
「で?あのバカはどこ行った?」
「…隣の部屋を見に行ったと思う」
「トキさぁーん!!!中条さぁーん!!!」
「………おい あいつ叩き出していいか」
「…これが終わってからにしろ」
聞こえてきたへタレた大声と足音に、中条と美柴が振り返る。
「~俺もうムリ!ここ怖すぎっスよぉ~!!」
「…寄るな」
「うっせーな デケェ声出すんじゃねーよこのバカ…!!」
「痛っ!」
単独行動がよほど怖かったのか、斉藤が半泣き顔で二人に駆け寄ってきた。
怖い怖いと美柴の肩に縋ろうとしたところを、中条が一撃で蹴りつける。
「ちょっと中条さん!俺見るたびに蹴り入れる癖、やめてくださいよぉ!」
「お前が悪ィんだろーが!やりたくてやってんじゃねーんだよ」
「何それ!なんで俺だけなの!?トキさんは蹴らないくせにー!」
「……蹴られるような事 してない。」
「てゆーかこいつ蹴ったら 何が返ってくるか分かったもんじゃねェ」
「あ。それ言えてるー」
「…どうゆう意味だ」
ゲーム中にも関わらず 毎度言い合う三人は、自然と円陣を組んで廊下に立っていた。
その足元が、パキパキと軋んでいる事にも気づかずに……。
「なんかー 中条さんなら怒られても「まいっかー」って感じだけど、トキさんに怒られると タダじゃ済まない感じがするんスよねェ」
「ほぉ。それは俺をなめてるって事か斉藤。いい度胸してんじゃねーか あぁ?」
「!ええ…!!ちちっち違う違う!!違いますよー!!」
「………近い」
指を鳴らしてにじり寄る中条と 両手を挙げて懸命に降参を示す斉藤に挟まれて、美柴が不機嫌に身を引こうとした…その時だった。
パキ…
「ー…?」
「覚悟できてんだろーなぁ斉藤くん」
「だから、そうゆう意味じゃないですってばー!」
「…今、変な音がし」
どしゃーん!!
足元が抜け落ちて、三人仲良く床下に墜落した…。
もくもくと微かな粉塵が舞い上がり、パラパラと細かい瓦礫が穴へと落ちていく。
ぽっかり開いた穴の中、AAAは各々 粉塵に咳き込んだり 頭に被った汚れを振り落としたりしつつ状況を把握する。
「何!?何、何これ、何が起こったの!?床が抜けたの!?」
「っあー!ったく お前らが騒ぐからだろーが…!!」
「…………………。」
自分は騒いでない、と内心不服に思いながら 美柴は上を見上げる。
這い上がるには難しい距離のように見えた。
同じように頭上を見た中条が舌打ちする。
「あー…こりゃ結構落ちたな」
「うわー 誰も怪我してなくて良かったっすねー」
「んな事言ってる場合か。敵に見つかったら即終了だぞ」
「あ!そうじゃん!まずいッスよ…!!」
「……どうする…?」
周囲を見渡しても 抜け道になるような隙間は無い。
どうやら完全に瓦礫で寸断してしまったようだ。脱出には、上しかない。
面倒な事になったと息をつく中条は、一拍 じっと美柴を見た。
見られたほうは 怪訝に眉を寄せる。
「…何だ」
「よし、美柴。お前上がれ」
「……は?」
「あ、そーですよ!俺らん中で一番身軽なのってトキさんだし!上がって ロープとか持ってきて下さいよ…!!」
「こんぐらい ちょろいだろ?身軽なんだからよ」
「………………。」
身軽、という単語が若干腹に引っ掛かるが そうも言ってられないのは確かだ。
美柴は反論を溜息で飲み込んで、上を見上げる。
…しかしいくらなんでも足場の無い状態で這い上がるには無理がある。
今度は美柴が、中条と斉藤をじっと見る。
「あ?」
「何すか?」
「……土台。」
と、美柴は足元を軽く指差す。
「足場になる背中が要る」
「………………………。」
「………………………。」
それはつまり、四つん這いになって美柴に踏まれるということだ。しかも土足で。
中条と斉藤が じっくりと視線を交わす。両者、譲らずだ。
「おい斉藤 お前年下だろ。お前がやれ」
「年功序列反対!中条さんのほうが背中広いじゃないですか!」
「生憎、俺のその広い背中は人に踏まれるようには出来てねーんだよ」
「いや俺だって出来てないっすよ!!」
「いいからお前やっとけって。なかなか無いぞー、美柴に踏まれるなんて経験」
「なかなかどころか普通ありませんよ そんなドエムな経験!!」
「おー じゃあエム冥利に尽きるな。やれ。」
「ちょ、俺エムじゃないっすよ!何その勝手なキャラ設定!!」
「どっちでもいいから早くしろ」
永遠と続きそうな言い合いに、美柴がきっぱりと告げる。
据わった美柴の表情に押され 慌てて斉藤が提案した。
「じゃあ ジャンケン!負けた方が土台!」
「~またお前勝手なこと言いやがって…」
「はい!出さなきゃ負けよ!ジャンケン、ポイ!!」
結果。
「……揺れる」
「おいシャキッとやれよ斉藤」
「~だーもう、絶対こうなると思ったー!!!」
四つん這いになった斉藤の背中に、慎重に美柴が足を乗せる。
傍観する中条は なぜか少し勝ち誇った笑みを浮かべていた。
「お前もっと背中平らにしてやれよ。美柴落ちるぞ」
「えェ!?こ、こんな感じっすか?」
「っ!動くな」
「いや もっとだな。もっと平らに」
「って中条さん自分がやらないからって無茶言わないで下さいよ…!あーもう早く上がっちゃってトキさん!!」
背中の上に立ち上がった美柴は、バランスを保つと 腕を頭上に伸ばした。
「…………………。」
「…………斉藤。悲しいお知らせがある。」
「?何すか」
「美柴じゃ届かねぇ。」
「ええぇぇええ!!?」
「それじゃあ背伸びしても足りそうにないな」
「…………………。」
そう、斉藤の上。ぐぐぐっと自分が伸ばせるギリギリまで腕を伸ばしたが、穴の淵に手はおろか 指先すら及ばなかった…。
「ったく、しゃーねぇーな」
心なしか ムッとむくれている美柴に 中条が「退け」と手を払う。
美柴が斉藤から降りると、中条は一言も無く その背を踏んだ。
「うげっ!!ちょ、中条さん重、い…!!」
「我慢しろよ、っと」
そうして 結局中条が斉藤を足場にして 穴の外へと上がった。
「よし」
軽く両手を掃って 穴を見下ろすと、見上げていた美柴に目配せをする。屈んで手を差し出した。
「ふぅ、重かったぁー。もー!乗るなら乗るって言ってくだ…って、ちょっと、何すかトキさん!?」
「乗る。」
差し出された手を理解した美柴は、起き上がろうとした斉藤の背中を強引に押さえつけて乗った。
「ちょ、え!?待って、俺はどうなるんすか!?」
「土台は黙ってろ。ほらよ、っと。お前軽いな」
焦りながらも しっかりと土台を務めた斉藤の上で、中条は軽々と美柴を引き上げる。
「よーし、上がってこい斉藤」
「ムリに決まってるでしょ!?ってか何で俺が最後!?」
「仕方ないだろ。美柴が最後じゃあ、手が届かねぇーんだからよ」
「…………………。」
「俺だって届かないですよー!!」
「わーってるよ。引き上げてやっから待ってろ」
屈んで斉藤に手を伸ばそうとする中条の横で、不機嫌に口を紡ぐ美柴は 背後の気配にサッと振り返った。
まだ目視は出来ないが、確実に誰かがこちらに向かって来る気配。
「……中条さん」
「あ?……チッ」
美柴のキリリと警戒した横顔から、中条もその気配を察知した。
ちょうど斉藤が差し出した手を掴んだところだったが、するりと離して立ち上がる。
「わわ!急に離さないで下さいよっ!!」
「悪ィな斉藤。それどころじゃなくなりそーだ」
「しばらくそこにいろ」
「えぇえ!?」
「大丈夫だ、携帯でもいじって時間潰してりゃーいい」
「すぐ終わる」
美柴と中条は 斉藤が残る穴に背を向けた。
二人で並んで、近づく気配に立ち塞がる。
「~ちょ、二人とも勝って下さいよー!?」
「ははっ 誰に言ってんだよ」
「当たり前だ」
そして今日も、この三人は名もなき勝利を手に入れる。
■どんな状況でも、AAAはAAAらしさを失わない。
突発のくせに時間かかってビックリ!でも凄く楽しかったです。
久々にちゃんとAAAが描けた気がします。満足です!笑
9/26 大人鴇と兄代わりのオーナーさん。小さい優希を巡るお話、の続きです。
何故かなかなか終わりませんが(笑") 区切りがついたところでちょっとずつ上げていきます
ここまで凄く時間かかったような気がするけど…読み直すと 短いですねー笑"
頑張るぞ…!
何故かなかなか終わりませんが(笑") 区切りがついたところでちょっとずつ上げていきます
ここまで凄く時間かかったような気がするけど…読み直すと 短いですねー笑"
頑張るぞ…!
じっくり暖めてきたお話です。
すみませんちびっ子優希シリーズなんですけど。笑"
美柴さんと優希くんの生活は最初から上手くいくわけがないと思うので、その辺の大人たちの葛藤をやってみたいなと。
………優希、たぶん自分が作ったキャラクターの中でも凄く愛着が湧きます。笑
小さい頃でもお話は思い浮かぶし、大きくなって高校生とかでも全然お話が書けるような気がします。
むしろやってみたいです。思春期の葛藤とか。
反抗期だけどどこに反抗したらいいのか分からなくて 悶々して葛藤するとか、もう言い出したらキリがないくらい…笑"
そうやって、成長させられるのは たぶん優希だけだと思います。
どこまで表せるか分かりませんが、この自己満足主義な変態さんにお付き合い頂ければ幸いです。笑"
言わずもがな、美柴鴇の未来を捏造したものになります。
原作キャラは人っ子一人出てきやしません。笑"
そうゆうのが苦手な方は、スルーして下さいませー!
■6/19記事の続き。(未来捏造・久しぶりの…)
ガッツリ砂糖大盛りの中鴇。
「…何だよお前、もうちょっと堪えろよ。軽く扱いただけだろーが」
「……ッ…うるさい」
リビングのソファーの上、覆いかぶさる中条が白く濡れた指を舐めて美柴を見下ろす。
早々に根を上げてしまった美柴は 肩で息をしながら腕で顔を隠していた。
本当に 、あれから誰とも付き合ってはいない。
ゲームが終わってからしばらくは 自分がずっと目を反らしてきた事実を受け入れるのに必死で。
ようやく落ち着いた頃には 優希との一日一日を大切にしていく事だけが自分にとって一番大切なことで。
パートナーと言える相手は居なかったし、必要だとも思ってこなかった。
火遊びなんて軽々しい真似がこなせる性格でもないし……今思えば本当に、自分でも呆れるぐらい 恋愛事に無頓着だったかもしれない。
それをこうもあっさりと、当たり前のように押し倒しているこの男。
「コレ位でイってたら お前明日死んでるかもな」
「!」
膝に絡んだままのズボンを取り去ろうとする手を、慌てて制した。
中条は制止を無視して 続けようとする。
「ッ…ソファーで」
「出したら飲んでやるって」
「そうゆう事じゃない」
「じゃあ飲んでくれんのか」
「…~~~」
堂々と言い放って 事を進めようとする中条に 言い返す言葉が喉で詰まる。
ギリギリとせめぎ合って いい加減にしろと重なる身体を振り払おうとしたところで、ふいにキスをされた。
煙草の匂いに包まれて 耳元に唇が微かに当たる。
「ここまできて我慢するとか、俺の性分じゃねーんだよ」
急に すっと低くなった囁く声に、ビクリと背筋に奇妙な感覚が駆け抜ける。
鳥肌が立って 身体がソワソワする。何も言い返せない。
込み上げる感覚に耐え切れず ぎゅうとしがみついてしまう手に、中条がやれやれと折れて 覗き込むように見つめてくる。
「……だからな、ベッドまでなら 我慢してやる。」
本当は今すぐにでもしてしまいたい。双方そう思っているのは明らかだった。
もうどうしようもないぐらい 恥ずかしい顔をしていそうだから、美柴は顔を上げずに一度だけ頷いた。
「……なんか、機嫌が良いな…」
「俺がか?」
リビングのソファーから寝室のベッドへと場所を変える。
ゆっくりと、けれど多少強引な力で押し倒されて、額や頬や目につく肌のすべてにキスを受ける。
横たえた美柴は 中条をまじまじと見上げた。
その視線を受けて、中条は少し微笑む。確かに、機嫌が良かった。
「お前が可愛く喘いでくれるからだ」
からかう口調でそう答えれば、返ってくるのは むっと面白く無さそうな顔。
そんな見覚えのある態度に、ふと口元が笑む。
あの頃の関係は、恋人なんて純粋なものではない。
だからといって セフレなんて軽々しいものではなかったような気もする。
『ゲームの間だけ』『重い枷を忘れるため』
お互いがお互いの心の内に秘めた暗闇に気がついてた。
気がついていて、知らないふりをしていた。
なんと表現すれば良いのか分からない曖昧な関係。
けれど確かなのは、決してお互いを嫌い合って解消した関係ではないということ…。
「あれから誰とも寝てねぇーなんて聞いたら 気分が良い。しかもこんなに分かりやすいと、尚更だ」
満足気な中条の笑みに、美柴は珍しく動揺していた。
顔が熱いのが分かる。ドクドクと鼓動が痛い。これは、行為の最中の動悸とは違う。
中条の言葉の一つ一つから 分かってしまうのだ。
自分は、思った以上にこの男に好かれている。……これはきっと、自惚れではなくて。
「機嫌が良いからな。何しでかすか分かんねぇーぞ」
「……嫌だ」
「とか言ってるわりには 何されるのか楽しみにしてんだろ?」
「…………………してない」
据わった目で見上げると、いつものように 中条は軽く笑った。
「いつだか言っただろ。俺には嘘ついても無駄だ、って」
「だったらもっと嘘つく、とも言った」
「いい度胸だな。泣いてもしらねーぞ」
「…泣く?」
「恥ずかしい事めいっぱい言わせてやる。覚悟しとけ」
自信たっぷりの悪どい笑みと食らいつくようなキスが懐かしくて。
(泣いてもいいから もっと…) そう思った。
■さぁ 欲しいのなら 愛を見せてごらん (TATOO/清春)
ある意味 双方言葉攻めの甘い中鴇。笑
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