素直じゃないんだから

■ただただ中鴇の短いお話。



いつもそうだ。
あいつは機嫌を損ねると 人の大事なものを隠す。
でもその場所は決まって同じだから、今日は先に行って待ってみようと思う。


佇む影が伸びてゆく夕暮れ時。
広い歩道橋の真ん中。柵にもたれて 少しだけ空を仰ぐ。
ここに辿り着いて 一体何本目の煙草だろう。
わざと大きく吐き出すと、涼んだ風が煙を運んだ。
何気なく運ばれるそれを追った視線の先。

ふわりと揺れて流れる白い靄は、紅い髪を通り過ぎる。

驚いた顔で人の顔を見て 目が合うと罰が悪そうに視線を反らすそいつを見つける。

悪かった。というと 押し黙ったまま差し出される手。
その手の平に乗っている くすんだ銀色のジッポ。
頑なに視線を反らす様子を少し笑って 受け取った。

先に行って待ってみようなんて面倒なこと、お前にしか思わない。
人の物 勝手に持って帰ってやろうなんて、あんたにしか思わない。
それって好きってことだろ？
……誰もそうは言ってない。

また拗ね始めるのが 可笑しくて。
誰もいない歩道橋の真ん中。
アスファルトに投射した影が そっと重なった。



■この時間が空間が 泣きたくなるくらい 一番大事なものだよ(虹/ニノ)

ずっとこの歌を元ネタにお話を書きたかった…!
実際は新婚さん的な歌です。ニノ作詞は案外ほんわか可愛くて好き。
(順調に嵐オタになってるNANOさん…/笑""えないかも←)