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愛猫やらお人形やら美柴双子やら…
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■本館 【我輩はネコである】外伝。


ある夜。
一人の青年が、勤める店の勝手口を静かに開ける。
夜風が彼の紅い髪をなびかせて、まだ肌寒いことを知らせていた。

いつもならこの時間そこにいるはずの、腹を空かせた細い猫。
漆黒の毛並みを持つあの猫が現れなくなって、今日で二週間になる。
飼っている猫ではない。
ただ いつだか気まぐれに自分の夜食を分けてやったら 三日に一度顔を覗かせるようになっただけの、ただの、ノラ猫だ。

「……………。」
まるで(良い子にしてたよ)と言わんばかりに行儀よく座り 尻尾を揺らす姿は、今日も無い。
青年は 何かぽっかりと穴があいたような、ざわざわと落ち着かないような、そんな感情で 一つ小さなため息を零す。

小さく千切ったパンとハムの欠片をそこに残すと、暗い路地の隅に目を凝らしつつ そっと扉を閉めた。


【我輩はネコである】


僕はネコである。名前は無い。
縄張りは 言わずと知れた都会の片隅。光と影が行き交う街だ。
そんな街の外れで、僕は今まさにノラ猫人生最大のピンチを迎えている。

「ォン!ォン!」
「フ―…!!」
そう、僕は大きな大きなノラ犬に 追い詰められているのだ。


黒い猫はまだ小さな身体を精一杯に膨らませ、目の前に立ちはだかる犬に威嚇を続ける。
いつもはツヤツヤの 毛づくろいを欠かさない毛並みが総毛立ち、牙を剥き出して 近づくなと叫んでいる。
一瞬のスキを見て、猫は犬の股下を潜り 逃げ出そうとした。

「!!」
「!に゛ゃん!!」

猫の突然の疾走に、犬は本能のまま その体に思い切り噛みついてしまった。
響き渡ったのは 黒い猫の悲鳴。その鳴き声に動揺し 犬は慌てて牙を離す。
ぼとりと口から落とされた猫はまだ走り出そうとする。しかし足が痛くて動けない。
もうダメだと 猫が観念したその時、目の前に何かがが走りこんできた。


「ふしゃぁ―!!!」
それは犬にも負けないぐらい大きな大きなぶち猫。
僕とは正反対の ぼさぼさの毛並みを、何倍にも膨れ上がらせて犬を威嚇する。
突然の乱入者にきょとんとした犬が一歩近づいてくると、すかさず強烈な猫パンチ。しかも一回じゃあない。まるでボクシングのように ベシベシベシッ!!と両手でその鼻っ柱を連打攻撃したのだ。

そうして尖る爪で殴られた犬は 弱弱しい悲鳴を上げて、一目散に逃げていってしまったのだった。

「……………。」
僕は 茫然とそのぼさぼさ猫の背中を見た。
尻尾は凄く短くて しかも毛が爆発しているから、まるで兎のそれみたい。
振り返ったぶち猫は 倒れている僕を見て、ふんッと一つ鼻を鳴らした。

(あんな犬っころに情けない声を上げやがって。お前はそれでもノラ猫か)
その顔には、大きな爪痕のような傷が走っていた。
耳だって片方が少し千切れて欠けてる。漢の勲章でいっぱいの猫だった。

(助けてくれてありがとう)
そう告げて 起き上がろうとするけれど、足の痛みに負けて 上手く歩くことが出来なかった。

(…ついて来い。体を休める場所に連れてってやる)
ぶち猫は 兎の尻尾を揺らし、ずんずん歩き始める。
僕は片足を引っ張りながら のろのろと、それでもぶち猫を見失わないように 歩き始めた。


「にゃおぉお―!!」
辿り着いたのは 一件の家。…の庭先。
どっさりと重そうな図体で縁側に飛び乗ると、ぶち猫は遠慮のない大きな鳴き声で、締め切られた窓に向かって体をぶつける。
対して 人間の家に近づいた事のない僕は、ハラハラと油断ならない気持ちで 縁側の下で体を縮こまらせていた。

「フランケン―!お前ドコ行ってたんだよ 心配したんだぞ―!!」
ガララ と開いた窓から、少年のような まだ若い元気な声が聞こえてきた。

「にゃお」
「にゃお、じゃないだろ!あッ お前またケガ増えてるじゃんかぁ~ 今度はどこの犬を苛めてきたんだよ全く~」
「にゃお」
「?何だよフランケン。下に何かあんの??」

ぐらり。

「みゃ…!?」
目の前に突如現れたのは、人の顔。
縁側の下、つまり僕 を覗き込んだのは 金色の短髪に 眼鏡を掛けた少年だった。
「あ!猫!ケガしてる!」
彼は、咄嗟に僕を掴んだ。
驚いて身体が動かなかった僕は ガシリと掴まれた感触に我に返り、フ―!と威嚇する。

「痛ッ ちょ、うわごめんごめん!噛まないで 何にもしないから…!!」
「フ――!!」
がじがじ と僕を捕まえる手に抵抗していると、あのぶち猫が少年の膝に乗っていた。
助けてと助けを求め 腕を伸ばすと、ぶち猫はなんと呑気に欠伸をしてみせる。

「おいフランケン!こんなおてんばな彼女、俺許さないからな!俺だって彼女を家に連れて来たことないんだぞ…!!」
「にゃお」
「な…!!お前今「お前は彼女自体いねぇーだろ」て言っただろ!俺には分かるんだからなフランケン!」
「一雄~!いつまで窓開けとくの、フランケン入れたなら 虫入るから早く閉めなさ―い!!」
「う…ッ。はいはぁ~い。ホラ、フランケン 飯にするぞ」
「にゃお―」
「あ。黒いキミはちょっと待っててね。今 手当てしてあげるからね」
「みゃ…!?」

「母さ~ん!フランケンが彼女連れて来た―。マキロンどこやったけ~??」
「~ナオ!ナオ!」
(うわわ!離せー 僕は外に帰るんだー そして僕は彼女じゃない!オス猫だぁー!!)

少年に握られたまま連れられる僕の懸命の抵抗を、ぶち猫フランケンは 何処か面白そうに ひげを揺らして見上げていた。


■歌舞伎町の猫が 何故狛江で保護されるのかは 聞かないでください。きっとアグレッシブルに追いかけっこしたんです。笑

因みに フランケンは 廃盤バックギャモンに載ってる斉藤の設定から頂きました。
斉藤が大事にしてる愛猫だそうですよ。ネーミング素敵すぎます!笑
家族みんなでフランケンフランケン言いまくってると面白いなと思い、わざといちいち名前呼んでもらってます。笑
外見は捏造しましたが、漢の勲章だらけで その姿がツギハギっぽいから『フランケン』なのかなぁーとか妄想しました。気に入ってます。笑
後編へ続きます―。

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