愛猫やらお人形やら美柴双子やら…
■以下、未来捏造シリーズ。優希+中鴇
前編。
ちょっと気持ちが重くなるお話です。
現在進行形で続き打ってるので 頑張ります。
前編。
ちょっと気持ちが重くなるお話です。
現在進行形で続き打ってるので 頑張ります。
朝起きたら、夜居たはずの中条さんが居なかった。
仕事じゃないことは鴇の顔色をみてすぐに悟った。
二人がケンカになることはよくある。
だけどどれも些細な原因で 次の瞬間にはどちらかが溜息一つで折れて解決していたりする。
僕はそんな二人の他愛もない言い合いを見るのが、実は結構好きだ。
だって、二人のケンカは 何だか言葉遊びに見えるから。
だけど、今日のこれは そんな軽々しいものじゃなかった。
一応(中条さんは?)と尋ねても、鴇は何も言わない。
僕のサインを見て ほんの少しだけ言葉を詰まらせ、だけどただ静かに首を振った。
(どうしたの?)
(…なんでもない)
それから二週間。
中条さんは家に来なくなった。
鴇は毎度二人分の食事を用意するようになった。
これは本当にまずい事態だと察して、もう一度 勇気を出して中条さんの話題をサインにした。
けれど鴇は見える感情も無く、ただ(気にしなくていい)としか言ってくれなかった。
僕にそれ以上の質問をさせないような空気で、時間だけが過ぎていった。
(……ねぇどうして?)
(…話したくない)
ストックされていたタバコ。
三人分あったはずの歯ブラシ。
ベランダの片隅に用意されていた喫煙スペース。
アトリエから帰る度に、何かが失くなっていると気付いてしまう。
きっと僕のせいだ。
それは漠然とした感覚だった。
明確な理由や心当たりは分からないけれど、鴇が(気にしなくていい)と言った時 僕は直感的にそう感じていた。
だからこそ、僕は鴇にそれ以上何も聞けなかったし 中条さんに連絡することも出来なかったんだ。
鴇は僕の為に色んなものを犠牲にしてきた。
中条さんはそれをよく分かっている。
(鴇が大事。)
それは僕だけじゃない。
中条さんだってそうなんだ。
僕が小さい頃から、中条さんは心配性な鴇を内心とても気に掛けている様子だった。
僕が倒れて入院した時 深夜にふと目を覚ますと、ソファーに隣り合う鴇と中条さんがいた。
怯えるように真っ青な顔をしていた鴇と そんな崩れ落ちそうな鴇を支えている中条さんを見て、じんと喉の奥が痛くなったことを覚えている。
僕の事で鴇に辛い思いはさせたくないと思って、そして 鴇に中条さんが居てくれて良かった とも思った。
鴇が一人ぼっちで悲しむのは嫌だ。
もう誰も、鴇から離れていかないで…。
『心配すんな、別に誰も居なくなったりしねーから』
なのに、……徐々に家から消えていく中条さんの痕跡。
僕が居ないうちに、一人でそれらを処分している鴇は どんな想いでいるんだろう。
泣くことも、怒ることも、愚痴ることもせず、まるでそうゆう感情全部を殺すように 鴇はいつも通りの顔で生活している。
それがどんなに辛い事なのか、僕には計り知れない。
踏み込んでしまったら 本当に鴇が壊れてしまいそうで怖い。
お願い。帰ってきて。
鴇が潰れてしまうよ…
一人 ベッドの上で膝を抱え、中条さんにメールを打つ。
願うように携帯を両手で握りしめて 送信した。
アドレスエラーという返信。
(…嘘)
震える指で何度も送信を繰り返す。
(どうして)
(どうして)
(どうして)
(どうして…!)
泣き出しそうになって、毛布に埋もれ 蹲った。
決定的だ。
今回のケンカは僕が原因だ。
だから鴇は僕に何も言わないんだ。
だから中条さんは僕との連絡手段を絶ったんだ。
僕が、僕がいるから鴇を一人にしてしまう…!
(どうして…!)
もう無駄だと分かっているのに、僕は何度も何度も何度も何度も メールを送信した。
帰ってきて。
鴇を助けて。
戻ってきて。
ごめんなさい。
いくつも文面を打ち込んで、ボタンを押す。
苦しくて 痛くて、微かに呻くような声が噛み締めた唇から漏れているのが分かる。
気を抜いたら、大声で泣き出しそうだった。
ぐるぐると苦しい想いが煮詰まって、吐き気がする。
何が原因だろうと思い返そうとしても 混乱する頭では上手くいかない。
どうしたらいいのか分からなくて、止めようの無い涙だけが次から次へと溢れてくる。
そうして 一睡もせずに朝を迎えてしまった。
その頃にはもう心も体も茫然と脱力してしまっていた。
重く響く頭痛に耐え切れなくて、頭痛薬を飲もうと起き上がる。
自室から出て 開いているリビングに人の気配を感じ取った。
鴇が居る。もう起きてるんだ。
途端に、息を殺す。このまま入っていったら鴇が心配する。
心配かけないようにと涙を拭って、こんな朝一に薬を貰う口実を考える。
(もう予備が無くなったから、持ってくよ)
そうだ これでいい。
出来るだけ明るい表情を作って、自分の口角が笑えていることを指先で確認した。
(おはよう)
そう言えばあとは言い訳を繋げて 薬を取って部屋に戻ればいい。
だけど、そう出来なかった。
開け放したドアの向こう。
窓の傍に置かれたパソコンデスクの前。
立ち尽くしている鴇が、一ケースの煙草をデスクから拾い上げるところだった。
それは今日までキーボードの横に放置されていた、封の切れた青いCABIN。
僕はそれから起こるであろう出来事を予感して、呼吸が止まる。
鴇の手の平からそっと零れるように 青いケースが落ちて、
紙くずでいっぱいのゴミ箱に消えた。
最後の煙草が、鴇の手で、目の前で捨てられた。
『僕が居ないうちに、一人でそれらを処分している鴇は どんな想いでいるんだろう。』
(……っ!)
僕に気づかない一人ぼっちの鴇の横顔を 見てしまった。
ひしひしと悲しみや苦しみに耐えていた。
じっと堪えて唇を噛み 遣り切れないと目を閉じている。
少し屈んだ鴇が ゴミ箱の中に思い悩むような視線で手を伸ばした。
(!)
やっぱり思い直して煙草を拾い上げるのかもしれない と一瞬気持ちが浮上する。
けれど、そんな淡い期待を裏切って、鴇は別の紙くずを手にした。
ぐしゃり。
上から青いケースを押し潰して、容赦なく奥深くに追いやった。
それから デスクの上に散らばっている用紙を静かに集めて、ゴミ箱に重ね入れていく。
普段の掃除のように見えて、けれど本当は普段どおりなんかじゃない。
もう見えないように。
痕跡を一つ残らず打ち消すように。
ぐしゃり。ぐしゃり。ぐしゃり…
「…っ」
淡々と繰り返していた鴇が ふと力を失って がくりと膝をついた。
心は駆け寄ろうとしたのに、僕の体は動いてくれなかった。
鴇の肩が、震えている。………たった一人で。
聞こえないはずの泣き声が聞こえてきたような気がして、両耳を必死で抑えた。
ぎゅうと拳を握り締めて小さくなる鴇を見て、怖くなって ひたりと後ずさる。
心を支配する理由の分からない罪悪感を ぶんぶんと首を振って否定する。
だけど、僕は分かっている。
鴇が一人で、傷ついて泣いている。
(………僕のせいで…!)
次の瞬間、僕は全力で踵を返していた。
そうして、そのまま家を飛び出した。
(鴇を一人にしないで)
僕の頭の中はそれでいっぱいだった。
駆け出した気持ちは止まらなくて、無我夢中で走った。
僕はもういい。病院でもアトリエでもいい。どこへだって行くから。
だから中条さんは帰ってきて。
お願い。お願いだから…
鴇を一人にしないで……!
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