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愛猫やらお人形やら美柴双子やら…
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■AAA結成直後。桐生+美柴



都内高級ホテル。ここに来るのは、二回目だ。
客やスタッフが行き交うロビーを抜けて 上階に向かう。
上昇したエレベーターが静かに開くと、見覚えのある男が立っていた。

「こちらへ」
確かあの時、桐生と名乗った男の後ろで 何かファイルを片手に控えていた男だ。
黒いスーツ姿に先導され、1006号室の前に辿り着く。
男は軽いノックをした後、扉を開けて 美柴を振り返る。
片手を上げて、中に進むように手の平で示した。

「どうぞ」
ちらりと 一度だけ男の顔を見た。慇懃無礼な 吊りあがった細い目をしている。……爬虫類みたいだ。

「私はここまで案内するようにと言われていますから」
「………………」
そんな事をされなくても ホテルの部屋ぐらい自分で行ける。
なんとなく馬鹿にされたような気がして 憮然と足が止まった。

「どうぞ」
先程より少し高圧的な声で、男はもう一度そう促した。
「……………………」
内心 うんざりと溜息を吐いて、仕方なく 部屋に入る。
カチャリとドアが閉まると、今度は男が後ろをついてくる。人を後ろに置くのは、いい気分じゃあない。

それでも足を進めて 応接室に入ると、窓辺に桐生が立っていた。
美柴を見て 少しだけ笑んだ桐生は、控える男に出て行くよう指示する。
男はポキッと小枝が折れるような一礼をして 捌けて行った。

「…………………」
「わざわざ来てもらってすまない。座りたまえ」
「………用件だけ聞いたら帰る」
「せっかく椅子があるんだ。立ち話もなんだろう」
「……立ち話でいい」
美柴が戸口から動かずにそう告げると、桐生はすっと見定めるような目を見せた。

「そんなに警戒することはない。他の二人にも後で一人ずつ来てもらうつもりだ。これはただの個人面談だよ」
「何の為に」
間髪居れず そう問う。
こんな得体の知れないゲームに飛び込んでしまったのは自分自身だか、赤の他人のチームメイトにも この意味深な"監督役"にも 気を許すつもりはない。

「何の為に…か。面白い質問をしてくるな」
桐生は眉を少し上げると、あざ笑うような笑みを見せた。
「……そうだな、しいて言うなら…」
わざとらしく言葉に間を開け、じっと視線を交差させる。

「逃がさない為に。」

一拍、キン…と強張る空気。
美柴も桐生も、どちらも視線を反らすことはない。
数秒のにらみ合いの末に 桐生がふと笑った。
美柴から目を離さず、窓辺から 中央に備えられた椅子へと歩む。

「君達の身辺はすでに調べてある、と先日言ったがね。君は少し興味深い」
「………………」
「どこまで知られているのか、という顔をしているね。……ほら、座りたまえ」

ゆっくりと腰を下ろした桐生は 向かいのソファーを示して 美柴を見る。
しかし美柴は動かずに ただじっと桐生を見返すだけ。

「……人に懐かない。なるほど、資料どおりだ」
「……………」
揶揄するような言い方に 微かに目に力が入った。
それを見取り 桐生はテーブルに置いてあったファイルを手にした。

「他にもある。バイト先は新宿のバーだ。君目当ての客もいるらしいな。学校はデザイン関係…成績は悪くない。時間がある時はジョギングをしている。コースは決まって川沿い。人が少ないから、といったところか…。昔から人混み等は苦手だったようだね」
饒舌に情報を並べ、桐生は覗き込むような目で美柴を見上げる。

「まだ、座る気にはならないかな?」
「…………何が言いたい…」
低い声。周りをすべて跳ね除ける空気感。微かに揺らいでいる呼吸。
不愉快。牽制。威嚇。否 桐生にはそれが『怯え』に映る。

………すべて、知っているからこそ。

「何が、とは?」
「………とぼけるな…」
「怒らせたのなら謝ろう。私はただ、監督役として 君をもう少し知っておきたいだけだ」

ー…手駒が逃げられないように、知り尽くす。

さぁ と嗜めるように前のソファーを示す。
しかしやはり美柴は動かなかった。

「……………………」
「座りなさい。君はもう、後戻りは出来ない」

出来ない、のではない。させないのだ。
桐生は静かに笑んだまま 立ち上がった。
一瞬 美柴は後ずさりそうになり しかし耐えて 桐生を注視する。

「私は、君が人に知られたくない事をすべて知っている」
「……………………」
「そんな顔をしないでくれ。まるで私が君を脅しているようじゃないか」
「……………………」
「君のビズゲームへの意気込みを、確認したいだけだ。別に君の秘密について 誰かに公言する気はない」
この男は絶対に好きになれない。心の中で 歯を食い縛って吐き捨てる。
落ち着けと自分に言い聞かせ 呼吸を深く意識する。
これ以上、桐生のペースに巻き込まれるな。

「……帰る」
「そうはいかないな。面談はまだ始まったばかりだ」
「金が要る。リタイヤする気はない。これでいいだろ」
「弟の為に」
「…っ」

知られていると分かっていたのに、実際に告げられると 言葉を失い 息が止まった。

「……………」
ギクリと目に見えて明らかに動揺した美柴に、桐生は目を細める。
「……やはりこれは禁句だったようだね。……しかし、何もかも資料どおりで つまらんな」
カツ…カツ…と革靴を鳴らし、桐生は立ち尽くした美柴の目の前に立つ。

「……何故そこまで弟に執着するのか。それも資料どおりならば……」
続く言葉から逃げようと俯いた美柴の顎を 指先で上げさせる。

「君は何を犠牲にしても、逃げられない」
ぐいと上向かされ、ギリと憤りと悔しさを込めて睨み上げてくる表情。

「楽しませてくれそうだ」

脆く儚いこの駒は、使い物にならなくなるまで 逃がさない。



■始めようゲームを どうせ人生はショータイム  (Real/TEAM『AAA』)

ビズゲーム界の攻め要員の中 かなりのダークホースである、桐生さん。(自社調べ/笑)
こうやって真っ黒で縛りつける"監督役"も萌えますが、何かあった時に奮い立たせてくれる菩薩様テイストの"監督役"も萌えます。
崩れそうになる美柴さんや脆いAAAの連帯感に 何か一言で道を示すような役割。ちょっとカッコいい。

………でも個人的にはやっぱり 腹ン中黒くて汚い鬼畜な大人であって欲しかったりしますけど。笑
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相変わらずNANOさんの書く小説はすごいです(^^;
圧倒された感じ?かな?
物語に引き込まれてしまいました(笑
こんな黒い桐生さんは初めてです…;
優しいイメージもあったのでw
でも鬼畜な桐生さんもいいなぁーと傾いてきた(ぇ
それでは失礼致します。
華爛|2009/07/27(Mon)|Edit
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