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愛猫やらお人形やら美柴双子やら…
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■満楼軒にて。AAAのお話。



「あ!そーだ!鴇さん、手ぇ出してください」

今まさに中条が見取り図をテーブルに広げようとした瞬間。
それはかなり唐突で 尚且つ 物凄く不自然な発言だった。
妙に浮ついた斉藤の笑顔が 美柴の警戒心を煽った。

「………………………。」
返事はせずに、怪訝な視線を投げて 何故だ と問う。
斉藤は全く動じずに 変わらない笑顔で答えた。

「いいからいいから! 手ぇ出してくださいよぉ!」
何がそんなに楽しいのか。全く、怪しいことこの上ない。
ほらほら と促す仕草に 不機嫌な眉を寄せる。
なんとなく、言われたとおりにしたくない。

「美柴、いいから手ぇ出せ。」
斉藤の隣から 今度は中条までも同じ事を催促してきた。
いつもなら「話の骨を折るな」とペンでその額を叩いて叱るところなのに、今日はなぜか斉藤に寛大だ。
煙草の煙を天井に吐き、早くしろよ と美柴に言う。
……咥え煙草で誤魔化しているつもりだろうが、口元が笑っている。

絶対に、どう考えても、今日の二人は怪しい。
そういえば 自分が来た時はすでに二人が揃っていた。
珍しい…というか今までそんなのは一度も無かった。

「………なんで」
「なんででもいいじゃないっすか!ほら、ここに手ぇ出して下さいよ!」
そう言う斉藤が テーブルの中央に手の平を差し出す。そこに手を置けということだろう。絶対に嫌だ。
「別になんにもしねぇーよ いいから出せって言ってんだろ」
なんでそんな上から目線で言われなきゃならないんだ。しかもニヤニヤとした笑みで。

「……………………。」
いっこうに行動の理由を明かさない二人を交互に訝しげに見比べた。
二人からまともな返事が返ってくる気配は微塵も無い。
仕方なく 短いため息を吐いて 片手を少しだけ、テーブルの上に差し出した。
そうしないと 今日の本題に移れそうになかったからだ。別に、言うことを聞いたわけじゃない。

斉藤が 二ッと笑って 差し出した手を遠慮なく握った。
ぐいっと引かれ、テーブルの中央まで引っ張り出される。
若干戸惑ったが、斉藤の手は美柴の手を離さない。
そうして、隠れていた斉藤のもう片方の手が テーブルの下から現れた。何かを握り締めているその手は、美柴の手の平の上で止まる。

「はい!鴇さん!」
斉藤の手の中から、ポロリと何かが落ちてきた。
その何かは 広げられていた美柴の手の平にコロコロと受け止められた。

「……………………。」
何かは、チロルチョコだった。
一番オーソドックスなミルクチョコレート。同じ包装の四角いそれが 三つ、手の平に転がっている。
そのチロルチョコに視線を落とす美柴の表情は、さっきよりももっと訝しげだ。しかめ面になってしまっている。
そんな困っている表情が可笑しくて、中条が ククと少し笑う。
零れた笑い声に気がついて、美柴が顔を上げると 斉藤が 盛大に息を吸った。

「ハッピーバースデー!!」
イェーイ!とラジオのパーソナリティのようなテンションで 斉藤は美柴に拍手を送る。
パチパチパチと軽快に叩く手を わざと中条の顔の前に見せ付けて 一緒に!と促す。

「はいはい わぁったよ。はっぴーばーすでー」
しつこい斉藤の手と笑顔を振り払いながら、中条もパチンパチンと気だるそうに それでも拍手を美柴に送った。

「………………………。」
安上がりだとか、何で誕生日を知っているのかとか、楽しんでるのは自分達のほうじゃないのかとか、思うところは多々あったわけだが。
……この面子にそんな言葉を言われると思わなかった。
二人の顔を 転がった三つのチロルチョコを見る。
ありがとう、なんて簡単な言葉が出てこない。

「んじゃ、話に戻んぞ。美柴ー 早く食っちまえよ」
「溶けちゃいますからねェー」

じっとチョコを見ている美柴に 少しだけ微笑んで、中条と斉藤は話題を切り上げようとする。
ありがとう、なんて言われるつもりは最初から無いのだ。そんなのは、似合わない。
けれど 何気に真面目で律儀な美柴鴇という人の性格を、チームメイトは知っている。きっと戸惑っているだろう。
だから、中条が先に動いた。

「まずこの正面の入り口についてだけどなー」
説明を始めるふりをして、美柴の手からチロルチョコを一つ、取り上げた。はて、と顔を上げた美柴をよそに 今度は斉藤が動く。
「狭い入り口ッスねェ~」
わざとらしく見取り図を覗き込むふりをして、美柴の手からチロルチョコを一つ、取り上げた。美柴の手に残ったのは、最後の一つ。

「…………………??」
意味が分からず 小首を傾げ二人を見る美柴に、中条と斉藤は にやんと笑った。

「だってほら!今日 バレンタインだから!」
「やっすいチョコだなぁ ったくよぉ」
そう言いながら 二人はあっという間に包装を剥がすと、ポイと口に投げ入れる。

「…………………は?」
「いやぁ~鴇さんからチョコ貰えるなんて超ビックリ!」
「俺 男からチョコ貰ったの初めてだぞ」
「………………なんでそうなる…」
「だってお前、チョコ三つあっただろーが。俺の分と斉藤の分とお前の分だろ?」
「鴇さん!とりあえず、誕生日おめとうございます!!」
「………………………。」

美柴はムッと眉を寄せた。それはさっきまでの困っている表情じゃない。
ちょっと拗ねたような、子供みたいな怒っている表情だ。
美柴の予想通りの反応に、中条も斉藤も満足している。
そんな小さなドッキリを成功させた気分で上機嫌な二人を 面白くないとキリリと見上げたが、楽しそうに笑っているだけだった。

こうして無情にも残った一つを 美柴はしっかりと失くさない様に手を握りしめて 自分の元に引き戻した。

「大事に食えよ?買ってやったんだからよ」
「そうそう、俺と中条さんで割り勘して買いましたからね!」
「……………安い…」
「あ?何だ なんか言ったか美柴」
「なんて言ったか聞こえませーん!」
「…………………………もういい…。」

美柴は わざとらしく聞こえないふりをする二人を 仕方がないと溜息で流した。
なんだかこのやり取りがくだらなすぎて、少し口元が笑ってしまった。
斉藤がやけに嬉しそうに笑っていて、中条も軽く笑って煙を吐いていた。

そっと開いた手の平の中で、一つ残ったチロルチョコ。
包装を剥がし、口に運んだ。普通の、いつだってコンビニで買える安いミルクチョコレートだった。
だから、なぜか手作りよりも美味いと感じたのは きっと勘違いなんだ。



■仲良しAAA。
ありがとう と言わせないのがAAAの優しさです。
…てか美柴さんの誕生日なのに この人全ッ然しゃべってないんですけど!笑

…こんな時間になってしまったぁー!レスはまた明日にでもッ


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Happy birthday!鴇!

なんてAAAらしい祝い方!

やっぱり、想像(妄想)しながら小説を読んでいました。(笑)

…チロルチョコ(笑)
とても楽しく読ませていただきました。
祐希|2009/02/15(Sun)|Edit
鴇さん誕生日おめでとー(´∀`)
取り敢えず手作りチョコをBUSの入ってる本棚の前に供えて←きた華爛です。
NANOさんの今回の小説すごい好きだー
教室で一人髪で顔隠しながらによによしてしまいました←
華爛|2009/02/18(Wed)|Edit
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