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愛猫やらお人形やら美柴双子やら…
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■美柴双子。



実家を捨ててゆく時、鴫の部屋から包装された小さな小箱が出てきた。

[HAPPY BIRTHDAY]と幾重にも印字されたリボン。
片手の平にすっぽり収まるほどの小さなそれは、手にするととても軽くて 振るとカサカサと微かに中身が揺れる音がした。

リボンに結ばれたタグをめくる。



[HAPPY BIRTHDAY 鴇!!]



………きっと、間近だった2月14日に備えて隠していたのだと思う…。
しかしその日を迎えることなく置き去りにされた、半身からの誕生日プレゼント。



恐くて、開けられなかった。

そのリボンを解いて 蓋を開けてしまったら、何もかもが崩れて 立っている事さえも出来なくなってしまいそうな気がした。


だから、見つけた時のままの姿で ずっとずっと大切にしまい込んできた。




それから何年かの時を経て、ある夢を見た。


『ねぇねぇ、開けてみてよ』
『結構面白いものが入ってるかもしれないよ?』


夢の中の彼は相変わらず無邪気で。
何か企んだような顔で 笑っていた。


「……………」

自分は昔から鴫の言葉に背中を押されっぱなしで。
目を覚ますと、奥の奥へとしまい込んでいた大切なそれを ようやく引っ張り出した。


そして神妙に蓋を開けて、呆然とした。


あの冬、自分も鴫に誕生日プレゼントを用意していた。
きっと鴫に似合うだろう。
そう思って買っておいた、指輪を二重に下げたロングネックレス。


あれと同じ代物が、その小箱の中 不織布に包まって眠っていた。


『え? ダメダメ、何が入ってるかは内緒だよ』
『でも、鴇もびっくりするかもしれないな』


別々に買ったはずなのに、知らずに同じ物をプレゼントしようとしていたわけだ。


『大丈夫 大丈夫。絶対、鴇に似合うはずだから』


(……………………)

夢の中、思わせぶりだった彼を想う。
自然と笑みが零れて、ふと溜め息をつく。
チェーンを指に絡め、掲げて見た。


(………………鴫…?)


数年越しに受け取った誕生日プレゼントを ぎゅうと両手に握りしめる。
込み上げる想いを噛み締めて、そっと目を閉じた。



(……ありがとう…)



それは、初めて言えた 半身への別れの言葉だった。



美柴鴇は、ただ一人 声を殺して泣いた。

自分達に降りかかったすべてを、ようやく受け入れて…。




■痛みは軽くなったろう 二度と、怖くないよ (ever 清春)

いつかそんな日が来れば良いな、と思いながら。
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思わず『泣いた分だけ悲しみが減れば良いのに』と祈りたくなる様な切ない感じがしました。

でもこうゆうお話し好きです!

祐希|2009/08/28(Fri)|Edit
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